基本的な考え方

カネカグループは、R2B+P活動の成果を特許などの知的財産として確実に権利化することにより、社会課題の解決に資するソリューションの早期提供への貢献を目指しています。すべての研究者や技術者は、知的財産がR2B+Pの活動のアウトプットの一つであるとの認識の下、得られた成果に対しては、積極的にノウハウも含めて知的財産の取得に努めています。
他者の知的財産権に対しては、これを尊重し、係争を未然に回避するため、テーマ提案、設備投資、事業化や仕様変更、ブランドネーミングなどの事業開発の節目において、必ず特許調査や商標調査、意匠調査を実施し、クリアランス確保に万全を期しています。

推進体制

社長直轄の知的財産部では、事業を支えるカネカグループの知的財産の確保と維持管理に努めています。
米州、欧州、アジアの統括会社には、知的財産専任者を配置し、現地の課題に直接対応する体制を整えています。国内外のグループ会社の知的財産リスクの低減、営業秘密流出の防止等のために、グループ会社と知的財産部との連携も強化しています。
2021年に改定されたコーポレートガバナンス・コードに基づく知的財産に対するガバナンス向上の活動を継続しており、知的財産担当役員へ毎月実施している定例報告会にて報告し、指示を受けています。
また事業部長や研究所長と知的財産部長との知財戦略による会議を部門ごとに年に1回実施しています。今後も、経営戦略に基づく各部門の事業戦略・研究戦略と知財戦略との連動を強化して、事業への貢献を目指しています。

知的財産の創造

事業ポートフォリオの強化に向けて、国内特許・海外特許出願を積極的に行い、権利化を図っています。2022年度は、新たに国内特許305件、海外特許243件を権利化しました。一方、知的財産経費の効率的な管理に努めており、活用されていない特許を積極的に放棄した結果、2022年度末における特許保有数は前年度とほぼ同等の国内特許3,354件、海外特許3,379件となりました。今後も、関連部門と連携して、より強固な知的財産ポートフォリオを構築していきます。
R&Bメンバーの特許出願へのインセンティブを高めるために2019年から施行した特許出願時の職務発明報奨制度により出願件数も増加し、知的財産ポートフォリオの拡充に貢献しています。

国内特許保有数

海外特許保有数

資源と知的財産活動

<知的財産活動>

研究者や技術者が、知的財産はR2B+Pの活動のアウトプットの一つであると認識し、得られた成果を権利化し積極的に活用できるように、知財教育を重視しています。
知的財産の基礎から、発明発掘や明細書作成などの応用、さらには知財戦略まで、新入社員や若手社員、中堅社員、リーダークラスなど各階層に応じたコンテンツを作成し、グループ会社を含めた技術系や営業を担当する社員が受講しています。調査研修、権利化ステージ別研修、テーマ創出や市場情報活用研修などの戦略的な取り組み、商標・ブランドや著作権研修など幅広いプログラムを用意し、eラーニングも活用しながら知財教育に取り組んでいます。また外部専門家と連携し、テーマ創出、情報活用、戦略立案に向けた人材育成にも力を入れています。

<価値創出につながる知的財産>

2022年度は、環境・エネルギー危機や食糧危機へ貢献する技術分野に注力して特許出願や権利化を行いました。
環境・エネルギー危機に対して、カネカ生分解性バイオポリマー Green Planet®の産生に関する技術を欧州で3件、製造工程で生じる排水処理工程を改善した製造方法に関する技術を日米中にて権利化しました。また、パーム油⽣産⼯程における廃液等を⽤いた製造技術を日米で権利化しました。用途関連では、発泡粒子の開発成果を日米で、積層体の製造方法に関して日本で権利化しました。このように、Green Planet®に関し、特許面からの補強を図っています。
ヘテロ接合バックコンタクト太陽電池に関しては、製造技術の権利化を日本、中国で行いました。
またさらなる高効率化が期待されるペロプスカイト太陽電池と結晶シリコン太陽電池を組み合わせたタンデム型太陽電池に関する技術を日本で権利化しました。
食糧危機の分野では、種子事業の権利化を進めました。高効率で幅広い実用作物品種に適応可能な「インプランタゲノム編集技術」(in planta particle bombardment(iPB)法)の展開として、未熟胚を対象としたiPB法、iPB法による植物の形質転換方法、iPB法を用いたゲノム編集方法に関する研究成果を米国で権利化しました。
発酵バターに関する開発成果を日本で権利化し、今後、乳製品事業の展開において活用できると期待されます。
健康危機への貢献では、ステントの送達用カテーテルや突起一体型バルーンの成型技術を日本で権利化しました。
新しい取り組みである大型ジェネリック医薬中間体のフロー連続反応製法に関する技術を日本で権利化しました。

<情報活用>

情報活用の取り組み

事業競争力強化に向けて、IPランドスケープ®などの情報解析、情報活用の取り組みを促進しています。2021年度の専任者の配置に続き、2022年度は知的財産部内に情報分析や活用を専門的に実施するグループを新設し、取り組み体制を強化しました。知的財産部と各部門が情報活用の重要性や有用性を共有するとともに、研究開発や事業の多様な課題や戦略立案に対し、連携して取り組みを行っています。さらに、顧客価値の理解、競争環境分析を通じて事業競争力向上を目指します。

(注)「IPランドスケープ®」は、正林国際特許商標事務所正林真之弁理士の登録商標です。

特許スコアの活用

多様な特許分析ツールを利用して公開済みの自社特許の価値を参照し、特許ポートフォリオの見直しに活用しています。登録特許の権利維持要否判断において、自社技術や事業への貢献に関する担当者の見解や維持費用のコストに加え、客観的な特許スコアも確認しながら、各特許の価値も意識したポートフォリオ見直しと権利の棚卸しを行っています。

<技術・ブランドのプロテクト>

情報漏えいと法令遵守

独自技術やノウハウが漏えいしないよう、営業担当向けに顧客開拓やサンプル提供の際、秘密情報の漏えい対策など知的財産保護に関する教育を実施しています。また、資料作成時の著作権侵害防止など著作権に関する教育も定期的に実施し、他者権利の尊重と法令遵守の強化に努めています。

ブランド保護

主要製品のブランド展開のため、カネカ生分解性バイオポリマー Green Planet®や頭髪装飾用繊維 カネカロン®などグローバルに展開している製品は、世界各国で商標を取得し、ブランドを保護しています。これら世界中の商標出願を常にチェックし、他者による同一または類似商標の権利化を防止する取り組みも継続的に行っています。類似商標の出願を検知したときは、各国特許庁へ異議申し立てを行い、他者による類似商標の権利化阻止につなげています。
当社が保有する商標を正しく使用してビジネスに活用することを目的として、2022年度は商標の保有件数が多い事業部門やIR部門などへの個別の商標セミナーを開催しました。

<DXによる業務の高度化>

特許調査において、AIツールの運用を開始しました。例えば、出願前先行技術調査において2022年度は調査の20%程度をAIツールによって行いました。従来の人手による調査より短納期で発明者へ報告できるため、他者の情報を早く把握してR&B活動へ反映させることができます。今後もAIツールの特徴を見定めながら、対象件数を増やす計画です。
またR&Bメンバーは、日常的に他者の新規特許出願動向を調査して把握しています。これまで人の手で実施していた分類付与をAIツールで行うことにより精度が高い情報をいち早く研究者へ届けることができます。これにより、業務効率化につながり、また人によるバラツキを抑制できるなどの効果も期待できます。

<組織間連携>

知的財産合同連絡会の実施

全部門の知的財産担当責任者を対象に、4月18日の発明の日に合わせて、毎年知的財産合同連絡会を実施しています。この連絡会では、知的財産部の取り組みを共有するとともに、部門における優れた知的財産の活動例を他部門へも積極的に紹介し、横展開することにより全社の知的財産の理解力向上を目指しています。

海外駐在員との連携

米州、欧州、アジアの統括会社所属の知的財産担当メンバーと国内知的財産部メンバーで、グローバルな視点で課題の解決や情報共有のミーティングを定期的に開催しています。
今後も海外メンバーとの連携をより進め、グローバルでの課題の解決に向けた活動を行います。

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