株式会社カネカ

RECRUITMENT 2018 PROJECT: Project Story (Engineering)

Project Story (エンジ)

マレーシア アピカル工場新設プロジェクト

グローバル市場での成長を担う
アジア新拠点でのチャレンジ。

※所属は取材当時

西田 哲也

カネカ・アピカル・マレーシア(出向)

1991年入社
基礎工学研究科化学工学専攻(修士)修了

中村 幸人

カネカ・アピカル・マレーシア(出向)

1996年入社
化学工学科卒

中嶌 信一

生産技術本部生産技術部 プロジェクト統括グループ

2005年入社(キャリア採用)
工学研究科機械情報システム工学(修士)修了

ますます需要高まるポリイミドフィルム ますます需要高まるポリイミドフィルム

ノートパソコンやデジタルカメラなどの電子機器を分解したことがあれば、基板と基板との間が薄茶色のフィルム状の配線で接続されているのを目にしたことがあるだろう。またときには、基板自体が薄茶色のフィルムで覆われた柔軟性のある構造となっている場合もある。これらのフィルムや基板はフレキシブルプリント基板(FPC)と呼ばれ、薄茶色のフィルム部分に使われているのがポリイミドという樹脂である。

ポリイミドは耐熱性や耐寒性、機械的靭性、電気特性(絶縁性)にきわめて優れた素材で、電子機器のFPCのほか、航空機や機関車等のモーターの耐熱性絶縁材料、さらには耐熱性・耐寒性・耐放射線性を生かして「IKAROS」などの人工衛星用の被覆材にも活用される、スーパーエンジニアリングプラスチックである。

カネカはデュポンが独占していたポリイミドフィルム市場に、「アピカル」という商標で自社のフィルムを生産・販売。とくに、高い精度を要求されるFPC向けにおいては世界シェアの4割を占める、日本を代表するポリイミドフィルムメーカーである。

スマートフォンやタブレットPCの普及に伴い、ポリイミドフィルムの需要は今後もさらに高まると見込まれているが、一方で最近は韓国や台湾などのメーカーもポリイミドの生産を本格化させており、いかにして価格を抑えながら増産を図っていくかが大きなテーマとなっている。こうした状況の下、2012年にスタートしたのがここでご紹介するマレーシアでのアピカルプラント新設プロジェクトだ。

2012年3月、カネカはマレーシアにあるカネカマレーシア工場内に、アピカルの生産プラントを新設することを決定。プロジェクトのリーダーに任命されたのは、滋賀工場でアピカルの製造グループリーダーなどを務めてきた西田哲也だった。
「社内では2011年から1年かけて新たな海外生産拠点の検討を進めてきました。マレーシアを選んだのはいろいろ理由がありますが、まず大きいのはコストの面。人件費はおおむね日本の3分の1。カネカマレーシア工場内の敷地を利用することで初期投資コストも抑制できます。二番目はインフラが安定していること。天然ガス産出国のため水や電気などのユーティリティが確保しやすく、調達コストも相対的に低い。最後に、マレーシアは日中韓とFTAを締結しており、交易条件の面でも有利といえます」

当時、アピカルは滋賀工場とKNA(カネカノースアメリカ)で生産されており、マレーシアに工場ができれば世界3拠点でのアピカルの生産体制が完成する。これによりトップシェアを維持する作戦だ。
「基本的には、滋賀工場にあるアピカル生産プラントと同じ設備をマレーシアに新設しますが、単なるコピーにとどめず、能力増強のための工夫も盛り込むことにしました。」(西田)

波乱万丈のプラント建設 波乱万丈のプラント建設

プロジェクトマネージャーとして今回のプラントの建設面におけるリーダーを務めたのは、中嶌信一である。2005年に造船会社からカネカに転職したキャリア採用組で、これまでカネカエンジニアリング(株)や高砂工業所のエンジニアリングチームで数々のプラント新設や改造を手掛けてきたプラント建設のプロフェッショナルだ。
「過去、高砂工業所のプラントを海外に持っていくプロジェクトは何回もありましたが、滋賀工場のプラントを海外に持っていくのは初めて。滋賀工場のエンジニアたちは、未経験の海外プロジェクトに少なからぬとまどいを覚えていました。そこで今回は高砂のエンジニアと滋賀のエンジニアが一緒になってチームを立ち上げたんです。このプロジェクトの“はじまりのはじまり”は、私たちエンジニア同士が人間関係をつくることだったと思います」

プロジェクトの実質的スタートは2012年4月。工事完了までは18ヶ月だ。プラント建設そのものはエンジニアリング会社に外注する。それに対してカネカ側のプロジェクトマネージャーとしての中嶌の役割は、製造・研究・エンジ会社と打ち合わせを重ねて仕様を固めることに始まり、その仕様に基づいた工事が計画通りに進行し、最終的にはきちんとした製品を生産するプラントが完成するよう、プロジェクト全体をコントロールすることである。中嶌は工事の序盤は月1週間程度の出張ベースで、さらに工事終盤は現地に駐在して工事を監督した。時には製造・研究の要望を叶えるためにエンジ会社と折衝したり、時には工事をスムーズに進めるために現地スタッフのサポートを仰いだりと、プラントの垂直立ち上げを遂行する責任者として判断を繰り返す慌しい毎日。中嶌はプロジェクトの序盤を振り返ってこう語る。
「フィルムの生産プラントはクリーンルームが必要で、一般的な樹脂プラントに比べると若干難易度は上がるものの、基本的には滋賀工場のコピープラントです。しかも日系のエンジ会社に発注しているのだから、そんなに難しいことはないだろうと高をくくっていた。ところがこれが甘かった(笑)。発注した業者がマレーシアでの工事の経験に乏しく、海外での建設工事を甘く見ていたため、プロジェクトが始まった当初は大変でした」

日本人は時間を守ることに対して真面目で、約束したことはなんとしてでも期限に間に合わせようとする。それに比べるとマレーシアを含め海外は、良く言えばおおらか。しかし悪く言えばルーズな国も少なくない。現地で調達した重機は手入れが不十分なためすぐに壊れ、労働者は日本人のマネジャーが目を離すとすぐにサボる。おまけに雨季に入ると長雨が続いて工事はできない。遅れを指摘しても、「OK, OK, No Problem」と返事だけは良いが状況は変わらない。そんな具合だからなかなか計画通りに進まなかった。

「われわれはマレーシアで何度もプロジェクトをやって痛い目に遭ってきましたから、彼らの気質はよく知っている。重機が壊れるのなら、もって来る前に検査する、壊れても直ぐに交換できるように予備機を確保する。雨季に長雨が降るのが分かっているので、雨季の前に人数を投入して、雨季の影響を最小にする。こんな風に先に予測して対応できるんです。こういうことを、エンジ会社のマネジャーにも事前に口を酸っぱくして話していたのですが、自分もそうですが、人間自分が痛い目に遭ってみないとなかなか理解できないものです」

蓋を開ければ、やはり予想通りのことが立て続けに起きた。「どうもこのままではうまくいきそうにない」そのうちにエンジ会社も気が付いて作業員にハッパをかけるようになり、工事は回り始めたが、その後も工事の進捗は綱渡り状態。何度も「もうダメか」と思う瞬間があったと中嶌はいう。最大のピンチは、工事の終盤、2013年の8月のことだった。行政による消防設備の完成検査が予定されていたが、その前日になっても消火設備が正常に動かない。
「ちょうどハリラヤという現地のお正月の直前だったので、次のタイミングまで検査を延ばすと半月くらい工事の完了が遅れてしまう。焦りました」

工事業者が2日間泊まり込みで作業にあたってくれたが、当日の朝でもまだ不安が残る状態が続く。しかしやるだけのことはやった、と腹を決めて検査をスタートした。結果は、一発合格。
「まさに間一髪。奇跡が起こったと思いました」

しかし、ここまで来れば大丈夫と思った工事完了直前、さらなる大問題が発生。マレーシア厚生省の医薬品管理部がアピカルの原料の一つについて輸入許可を出せないと言ってきたのだ。原料を入れられなければアピカルは生産できず、プラントは無用の長物と化してしまう。プロジェクトの責任者である西田は焦った。
「まさに寝耳に水でしたね。工事開始前に確認した時は問題ないと言っていたのに、担当者が変わって厳しい要求を突き付けてきたのです」

アメリカでも輸入が認められている原料。それなのに、なぜマレーシアではダメなのかと、西田は担当者との間で交渉を繰り返した。この緊急事態に、もはや立場の違いは消え去った。日本人メンバー、現地のスタッフそれぞれが自分の持ち場から考えられるだけの知恵を出し合い、情報をかき集めた。そして1か月半後、どうにか輸入許可を得られる代替案にたどり着く。これをもって、行政から正式な了解をとりつけた。このプロジェクトに関わった全員が、やっと安堵した瞬間だった。

一つ問題を解決したら、胸をなでおろす暇もなく次の問題が起きる。最後までエンジニアたちを飽きさせなかったこのプロジェクトを振り返って、西田は笑う。

英語力よりも大事なのは「伝える熱意」 英語力よりも大事なのは「伝える熱意」

工場の新設は、プラントの設備をつくるだけでは不十分。それを動かすオペレーターがいなければ稼働はできないからである。プロジェクトにおけるオペレーションテクニカルアドバイザーとして、現場で作業するマレーシア人社員の採用および教育を担当したのが中村幸人だ。このプロジェクトは、彼の活躍抜きには語れない。
中村は高校卒業後の1996年にカネカに入社。滋賀工場でアピカルの製造オペレーターを担当したのち、製造グループの技術スタッフとしてアピカルの製造畑一筋に歩んできた。まさにアピカルの製造現場を知り尽くした人材といえるだろう。
「海外勤務の話を聞いたときは冗談だろうと思いました」(中村)
しかし、「海外勤務の経験はありませんが、現場を良く知っていて、誰とでも打ち解ける社交性がある。彼ならやってくれると思って抜擢しました」とは西田の弁。

中村はプロジェクト開始直後からマレーシアに出張し、人材の確保に奔走した。まずカネカマレーシアと交渉し、班長要員としてマレーシア人の経験豊富なオペレーターを確保した。同時に他社の工場などで働くマレーシア人に声を掛け、数十人を新規採用する。
2013年1月、中心メンバーたちを監督候補者として滋賀工場に呼び寄せ、製造現場で3か月間の実務研修を実施した。
「ちょうど彼らが来た数日後に雪が降った。みんな雪を見るのはその時が生まれて初めてだったので、大興奮していましたね。ただその翌日からは、寒い寒いと言って震えていましたが(笑)。慣れない寒さの中、頑張ってトレーニングに励んでくれました」

研修生たちは滋賀工場のアピカル製造ラインに入ってオペレーション作業を体験。研修終了時には、滋賀工場のスタッフが作った揃いの帽子をプレゼントされ、大いに喜んだ。全員集合して笑った写真が今でも滋賀に残る。この貴重な体験で、来るオペレーション業務への士気が高まったことは間違いない。
「滋賀工場に連れて行けなかった人たちの中にも、帰ってきた仲間から話を聞いて、『自分も一度日本に行って勉強してみたい』と言っている人もいます。そのうち第二弾を企画する必要があるかもしれませんね」
2013年6月からは中村もマレーシアに駐在し、現地社員の教育やマニュアルの作成などに務めている。マレーシア人社員とのコミュニケーションは、基本的には英語で行うことになるが、中村自身、もともと英語はそれほど得意ではなかった。どうやって意思の疎通を図っているのだろうか。
「片言の英語とジェスチャー、あと細かいことは絵を描いて伝えました。もともと相手のマレーシア人も母国語はマレー語ですから、お互いに英語は完全ではありません。その点、絵にするとイメージでわかる。言語に頼らなくても大抵のことは伝わるものだと感じました」

もちろん英語ができるに越したことはないが、それ以上に大切なのは伝える熱意なのだということが伝わってくるエピソードだ。

自分を型にはめず、新しい挑戦を 自分を型にはめず、新しい挑戦を

2013年10月、工事が完了し試験運転を開始。
「最後の方で工事を急がせたので、やり残しがあったり、運転を始めて気がつく不具合もあるため、手直しを積み重ねて完成度を高めていきました」(中嶌)
商業生産を始めたのは2014年1月のこと。以来徐々に生産量を増やしているが、まだフル稼働には程遠い状態だと西田はいう。
「フル稼働に持っていくには、まだいくつかの課題をクリアしていく必要があります。今回のプラントには、日本の設備にはない『能力増強のための工夫』を施しています。それらが全てうまく機能して、設備の能力を100%引き出せたら、ようやく自分にとってこの仕事の完成といえるんですが。そこに到達するまで日本に帰るわけにはいかないでしょうね」

まだ道半ばといいつつも、今回の海外プラント立ち上げはプロジェクトに参加した3人とって意義深いものとなった。最後に、その思いを踏まえつつ、学生の皆さんに対するメッセージを語ってもらうことにしよう。
「ずっと国内でしたから、この年で海外に出るとは思ってもみませんでした。話が来たときは驚きましたが、これまでの殻を破って飛び出してみることで、新しい仕事の醍醐味を味わうことができた。これからカネカに入ってくる若い人たちは、自分を型にはめず、積極的に新しいものに挑戦していただきたい」(西田)
「海外でのプラント建設は日本の本社と距離があるため、いちいち本社に指示を仰がず、自分の責任で判断しなければいけない部分が多くあります。たとえば、数十億円の予算規模を主任の立場で切り盛りできるのは海外案件だけ。責任は重いけれどもチャレンジしがいのある仕事です。ちなみに同じプラント建設でも、カネカのようにオーナー側の立場でやる場合は、自分自身がプロセスの中に入っていけるし、ときには商売の中まで関与することもできる。その意味では、他社の請負でやるプラント建設よりも世界が広がって面白いのではないかと思います」(中嶌)
「高卒で工場に入り、かつて『いまどきの若いもんは』といわれていた自分が、海外で工場の立ち上げに関わるようになるとは思いもしませんでした。誰にでもそういうチャンスがあるのが、カネカという会社の面白さかもしれませんね」(中村)

カネカは2020年のグループ目標として売上高1兆円を掲げており、うち4,000億円はアジアが担う。経済成長著しいアジア市場の取り込みに向け、マレーシア拠点にかかる期待は大きい。今後は生産機能に加えて、マーケティング機能やラボなど技術サービス機能も拡充。日米欧にマレーシア拠点の増強が加わり、世界4極生産体制でカネカの海外展開はさらに加速していく。

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