科学技術振興機構が「羊膜由来間葉系幹細胞の細胞製剤化と治療応用」を産学共同実用化開発事業に採択

株式会社カネカ 広報室
2014/09/10
株式会社カネカ(本社:大阪市、社長:角倉 護)は、独立行政法人国立循環器病研究センター(吹田市、理事長:橋本 信夫、代表研究者:再生医療部室長 山原 研一)と共同で応募していましたプロジェクト(羊膜由来間葉系幹細胞(以下、羊膜由来MSC)*1の細胞製剤化と治療応用)が独立行政法人科学技術振興機構(以下、JST)の産学共同実用化開発事業(以下、NexTEP)*2に採択され、再生・細胞医療関連事業の拡大に向けて、2014年7月1日より開発事業を開始しました。
*1 羊膜由来間葉系幹細胞(羊膜由来MSC)
  羊膜に存在する未分化の細胞。筋肉、骨、軟骨、脂肪など間葉系に属するさまざまな細胞に分化する能力や自己複製の能力を持ち、免疫抑制作用がある。
*2 産学共同実用化開発事業(NexTEP)
  大学などで生まれた実用化が困難なシーズ特許を用いた開発について、JSTが開発実施企業に開発費を支出して開発委託する事業。
羊膜由来MSCは生体内にある幹細胞の中でも①増殖性が高い、②拒絶反応が起こりにくいため他人に移植しやすい、③羊膜は出産後不要となり倫理的にも問題となりにくい、といった特長があります。この羊膜由来MSCを使用し、急性移植片対宿主病(以下、急性GVHD)*3、およびクローン病*4を対象とした治験を、公益財団法人先端医療振興財団、兵庫医科大学(西宮市、理事長:新家 荘平)、および北海道大学(札幌市、総長:山口 佳三)をはじめとした国内医療機関・研究機関と連携の上、実施し、細胞製剤(再生医療を活用した製剤)の製造販売承認取得を目指します。
*3 急性移植片対宿主病(急性GVHD)
  骨髄移植など造血幹細胞移植における重篤な副作用であり、難治性免疫関連疾患の一種。移植した細胞(移植片)に含まれるリンパ球が患者(宿主)を攻撃し、紅斑、肝障害、下血などを引き起こす。日本では、年間3,000例以上の造血幹細胞移植が行われており、そのうち50%以上の確率で急性GVHDが発症している。
*4 クローン病
  主に小腸や大腸に炎症もしくは潰瘍を引き起こす、若年者に多く発症する原因不明の炎症性腸疾患。日本におけるクローン病患者数は年々増加しており、現在3万人以上が認定されている。
具体的には、
①細胞の調製および保存が可能な製造所を、製造設備・品質管理・製造管理などの品質保証の基準として厚生労働省が定めるGood Manufacturing Practiceに準拠し(GMP準拠)、かつ産学の連携を強化するために神戸国際ビジネスセンター(神戸市)内に設置
②同製造所にて羊膜由来MSCの大量培養・凍結保存技術(細胞バンク化技術)を確立
③急性GVHD、およびクローン病を対象とした治験を実施
④2022年に羊膜由来MSCの細胞製剤の製造販売承認取得
を目指します。
さらに、これを皮切りに、羊膜由来MSCの細胞製剤をさまざまな難治性疾患の治療に展開し、2037年には1,000億円規模の事業を目指します。

当社は、骨髄由来間葉系幹細胞を分離するデバイスや間葉系幹細胞を閉鎖系で自動培養する装置など、再生医療の実現に貢献できるデバイスや装置の研究および商品開発を実施しています。さらに、当社関連子会社の株式会社バイオマスター(横浜市、社長:村瀬 祥子)が経営するセルポートクリニック横浜(横浜市、院長:辻 直子)では、細胞調製技術を活用し、脂肪由来間葉系幹細胞を利用した乳房再建術などの再生医療を実施しています。
これらに加え、本開発事業による羊膜由来MSCの製剤化により、再生・細胞医療関連事業をさらに強化していきます。また別途、医療機関のニーズに対応した細胞調製受託事業の展開も図り、再生・細胞医療の普及に向けてさらに貢献していきます。

当社は2009年に制定された「KANEKA UNITED宣言」で健康に関する分野を重点分野の一つと位置付けております。今後も健康に貢献する研究および商品開発を積極的に展開していきます。

以 上