世界初 生分解性バイオポリマーの原料となるPHA の合成酵素の全体構造を解明
-Green Planet®の生産性向上に期待-
株式会社カネカ 広報(Public Relations)部
2025年5月27日
株式会社カネカ(本社:東京都港区、社長:藤井 一彦)は、奈良先端科学技術大学院大学(学長:塩﨑 一裕)研究推進機構との共同研究において、生分解性バイオポリマーの原料となる「ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)」の生合成に関わる最重要酵素(※1)「PHA合成酵素」の三次元構造を、X線結晶構造解析法(※2)を用いて世界で初めて解明しました。2025年5月27日
当社が開発した、カネカ生分解性バイオポリマー Green Planet®(以下、Green Planet)は微生物が天然に合成するポリヒドロキシアルカン酸(PHA)の一種でありPHBH(※3)と呼ばれる物質です。今回の研究では、今まで解っていなかったPHA合成酵素の全体構造が明らかとなり、更に微生物細胞内でのPHA合成メカニズムが世界で初めて解明されました。このことは、酵素の機能を分子レベルで理解するための重要な手がかりになります。当社では本研究成果を利用し、高性能なPHAを効率的に作り出す研究への応用を進めます。
尚、本研究成果は、5月6日(火)付けのドイツ国際科学雑誌「Angewandte Chemie International Edition」(アンゲバンテ・ケミー誌 国際版)に掲載されました(※4)。
当社は、Green Planetの研究開発を1990年代前半に開始して以降、独自のバイオ技術と高分子技術を結集し研究開発を続けています。今回の研究成果や独自の成形技術を基に工業的生産性を飛躍的に向上させ、Green Planetをグローバルに普及させることで、サステナブル社会の実現に貢献してまいります。
以 上
(※1)酵素:生体内で起こるさまざまな化学反応を助ける触媒作用を持つ必須タンパク質です。
(※2)X線結晶構造解析法:光の回折現象を応用して、X線を結晶に照射して得られる回折パターンから、結晶中の分子の立体的な配置を決定する方法です。
(※3)PHBHは3-Hydroxybutyrate(3HB)と3-Hydroxyhexanoate(3HH)という2つのモノマーからなる共重合ポリエステルです。
(※4)「Angewandte Chemie International Edition」(アンゲバンテ・ケミー誌 国際版)
印刷前オンライン速報版 https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.202504626

PHA合成酵素の立体構造(左)と植物由来モノマーからPHAへの触媒メカニズム(右)(※5)
(※5)酵素が活性状態で機能するためにはN末端ドメインが介在する二量体形成が重要であることが示されました。植物由来原料から生成されたヒドロキシアルカン酸モノマー(短鎖および中鎖)が活性部位に取り込まれ、N末端ドメインを介した二量体構造によって安定化された酵素が連続的にモノマーを重合し、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を合成します。生成されたポリマーは生成物排出経路から排出されます。
(※2)X線結晶構造解析法:光の回折現象を応用して、X線を結晶に照射して得られる回折パターンから、結晶中の分子の立体的な配置を決定する方法です。
(※3)PHBHは3-Hydroxybutyrate(3HB)と3-Hydroxyhexanoate(3HH)という2つのモノマーからなる共重合ポリエステルです。
(※4)「Angewandte Chemie International Edition」(アンゲバンテ・ケミー誌 国際版)
印刷前オンライン速報版 https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.202504626


PHA合成酵素の立体構造(左)と植物由来モノマーからPHAへの触媒メカニズム(右)(※5)
(※5)酵素が活性状態で機能するためにはN末端ドメインが介在する二量体形成が重要であることが示されました。植物由来原料から生成されたヒドロキシアルカン酸モノマー(短鎖および中鎖)が活性部位に取り込まれ、N末端ドメインを介した二量体構造によって安定化された酵素が連続的にモノマーを重合し、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を合成します。生成されたポリマーは生成物排出経路から排出されます。